梅とペクチン

様々な植物や果実に含まれるペクチン質。

柑橘類ほどでの多さではありませんが、梅の実にも多く含まれています。
このペクチン質を構成している不溶性・水溶性ペクチンは、大きく分けるとこんな感じ。

・塩酸可溶性ペクチン(プロトペクチン/不溶性)
・ペクチニン酸(水溶性ペクチン)
・ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン(ペクチン酸)

細胞同士を強固に、また柔軟にくっつける糊のような働き。

未熟なときは細胞同士をガッチリ結びつけている
プロトペクチンが多い(分解されていない)ので、
梅はカチカチの状態で張りがありますが、
熟してくると，水溶性ペクチンが増えてくるので，
手触りでもわかるような柔らかな梅になります。

ペクチンというと、ジャムのイメージがありますが，
先日の記事
梅干し用の塩選び – 無難に漬けるなら日本の風土に合った塩
にも書いた通りで，カリカリ梅もペクチンの働きを
利用(働きを止める)することで、カリカリの食感を楽しむことができますし、
梅干しもこの「追熟によって柔らかくなる」という
ペクチンの働きを利用して漬けています。

これはちょっと面白い梅干し。確か平成9年頃に漬けたものと記憶していますが，追熟がかなり進んだ状態で、梅干しとして漬けたもの。土用干し後，普通の保存方法(干した梅のみを瓶で保存)していたら、梅の有機酸や糖分，そしてペクチン質の働きで，梅干し酢がゼリー状になっていました。

瓶を揺すると，瓶の形になった梅と梅酢がポコッとします。

上部はこんな感じ

ちなみに、土用干し後、保存瓶に入れて数ヶ月後はこんな感じでした

この年の梅の出来具合だったのか、
それとも追熟によって自然に出来上がった絶妙なバランスだったのか、
この年以降の梅酢(梅干し酢)は，とろ～っとしたいつもの梅干し酢。

自然の恵みには、人間がわからない不思議な現象がたくさんあるものです。
※梅干し酢：梅干しから出た梅の汁を梅酢と区別するために、勝手に名付けた通称です(^-^;)

自然や植物の事，まだまだ解明されていない事はたくさんで、
調べれば調べるほど奥が深いなぁ～と感じる事もしばしば。
一つ一つの植物や果実の中には、それぞれに小宇宙があるような気がします。
・・・キリが無い世界かも「(^-^;)

メモ – ペクチンの少し詳しい話

ペクチン質を構成している不溶性・可溶性ペクチン

・HSP(Hydrochloric acid Soluble Pectin)
　塩酸可溶性ペクチン(プロトペクチン/不溶性)

・WSP(Water Soluble Pectin)
　ペクチニン酸(水溶性ペクチン)

・HSP(Hexametaphosphate Soluble Pectin)または
　XSP(HeXametaphosphate Soluble Pectin)
　ヘキサメタリン酸可溶性ペクチン(ペクチン酸)

梅未熟果のペクチン質は、不溶性のプロトペクチン(HSP)が主流ですが，果実が育っていくに連れ、プロトペクチンはペクチン分解酵素によって加水分解され，水溶性ペクチン(WSP)の割合が増えていきます。梅の場合，この段階(収穫前)では、ペクチン酸(HSPまたはHXSP)の増減はほとんど無いようですが、柑橘類は、収穫後期になるとペクチン酸が増加する傾向にあるようです。