[浸透圧] なぜ梅酒には氷砂糖?グラニュー糖は駄目?

前回の記事
梅に穴をあけるレシピは ○? X? – 浸透圧の働き に書きました
「おたのしみ」でございます(^-^)

梅酒作りになると出てくるのが氷砂糖。
でもなぜ梅酒には氷砂糖なのでしょう?

なんであんなに溶けにくい砂糖を使うんでしょうかね。
グラニュー糖などを使えば、あっという間に溶けるのに。

という疑問。

なぜ氷砂糖かというと、
氷砂糖でなければ駄目な理由があるんですね。これがまた。
これは、「溶けにくい」という性質を利用して、
梅のエキスや香りを引き出すからなのです(^-^)

以前の記事に書いたように、「浸透圧を利用して作る」という点は
漬け物も梅酒も一緒ですが、漬け物と違うのは、
「梅酒の場合は浸透圧を二度使う」という点。

一般的に、梅酒を作る時に使うのは、
・梅 ・ホワイトリカー ・氷砂糖 の三つ。

これを役割分担させてみると、
・エキスや香りの元 = 梅
・浸透圧を使って梅のエキスを引き出すもの = ホワイトリカーと氷砂糖
に分けられます。

梅のエキスや香りなどは、梅の実の中にありますが、
これが出てくるきっかけの第一段階が、
アルコール分子や水分(ホワイトリカー)。

梅の実の中にある糖分が、実の外と同じ糖度にしようと
(実の中の糖度を薄めようと)して、
実の外にあるアルコールや水分子を実の中に引っ張ります。

梅の実から、糖分が外に出れば良いのでは?と思いますが、
そこがうまく出来ているんです。これがまた。

梅の表面にあいている小さな穴は、アルコールや水のように
小さい分子を通す事が出来ても、糖分を通す事は出来ません。
そのため、実の外にあるアルコールや水の分子を、
実の中に一生懸命引っ張ります。

これが最初に起こる浸透圧の働き。

こうして、アルコールや水の分子は梅の表面の小さな穴を通って、
実の中に入って行きますので、元々の梅の実よりも、膨らみます。

そして、アルコールと仲が良い芳香成分(香りの元)などのエキスが、
梅の実の中に入ってきたアルコールに溶け出します。

ここまでが第一段階(※1)

 この梅の実が膨らんだ状態は、梅の実が酔っぱらった状態(^-^;)

 一杯飲んで、いい気持ちになった梅さんは、
 お土産(実の中にあるアルコールにしか溶けない成分)を、
 入ってきたアルコールに配り始めます。お酒が入ると気前がよくなるタイプ(^-^;)

 梅さん宅に遊びに行ったアルコールさんたちは、居心地が良くて、
 梅さんも上機嫌なのでなかなか帰ろうとしないわけです(^-^;)

そこで、次に活動を始めるのが氷砂糖。

氷砂糖は、その特性から、
じわじわとホワイトリカーの中に溶けて行きます。

このじわじわがポイント。

氷砂糖がじわじわ溶ける事で、梅の実の外では、
少しずつ少しずつ糖度が上がって行きます。

 梅さん宅に遊びに行ったきり帰ってこないアルコールさんたち。
 いつ帰ってくるのかしら?まだかしら?と
 ホワイトリカー宅では、帰ってこいコールがはじまります(^-^;)

ここで第二段階の浸透圧。

先ほどの浸透圧では、梅の実の外よりも梅の実の中の
糖度が高いため、アルコールや水分が梅の実の中に
入って行きましたが、今度はその逆の働き。

氷砂糖がじわじわ溶けて行き、梅の実の糖度よりも、
梅の外の糖度が上回った時に、今までの力の均衡が崩れ、
今度は梅の実の中に入っていたアルコールやエキス分などが
外に引っ張り出されます。

 とうとう堪忍袋の緒が切れて・・・
 ホワイトリカー宅から梅さん宅にお電話が。

 「長居しちゃってすみません」で数名帰宅(^-^;)
 「そろそろ戻るようお伝え下さい」で数名帰宅(T-T;)
 「帰って来るように言って下さい!」でみんな帰宅(@_@)

少しずつホワイトリカーの中の糖度が上がっていきますので、
力の均衡がなかなか保たれず、休む間もなくじわじわと。

梅の実の中から、アルコール分や水分は梅のエキスを連れて
外へと出て行き、梅がしぼみ始めます。

これがコクのある梅酒を作るポイントになります。

これらの活動が落ち着く(均衡が保たれる)期間を考えて、
昔から「飲み頃は三ヶ月~半年先」になっているんだと思います。

個人的には焦らずのんびり一年は寝かせた方が、
美味しい梅酒になると思います。
 ちなみに今飲んでいるのは二年ものだったりします。呑兵衛のこだわり?(^-^;)

で、もう一つの本題。グラニュー糖は駄目?という部分。
溶けやすいグラニュー糖を使うと、このバランスがどうなるのでしょうか。

グラニュー糖を使うと、最初からホワイトリカーに溶けてしまうので、
第一段階の浸透圧を飛び越え、糖度のバランスを保つために
第二段階の浸透圧の働きが優先になってしまいます。

この働きで、梅の実の中から水分やエキスなどが引き出されますが、
アルコールと仲がいい芳香成分などが充分に引き出されない梅酒になります。

 前出の流れでいくと、
 アルコールさんたちは、梅の実さん宅にお邪魔して、
 お土産をもらってこようと思っていたんだけど、
 出かけようとしたら「行っちゃ駄目!」と言われたような状態。
 梅さんからの貴重なお土産の無い梅酒になってしまうということです(^-^;)

と言っても、
例えば、最初に梅とホワイトリカーを漬け込み、
しばらくしてからグラニュー糖を数回とか数十回に分けて
ホワイトリカーに溶かすといった作業をすれば、
使って使えない事は無いのでしょうが・・・

かなり手間がかかりますよね(^-^;)

ということで、氷砂糖を使った方が、手間もかからず、
おいしい梅酒を作る事が出来るというわけなのです。

昔からあるレシピは、
先人の経験から得た知恵がたくさん詰まっています(^-^)

現代風インスタントではなく、自然のペースに合わせてのんびりと構え、
梅酒の瓶の中で起こっている、糖分やアルコールの活動に思いを馳せて、
梅酒作りを楽しんでみてくださいませ (^-^)

※1
第一段階と区切ってしまいましたが、理屈の続きで考えると、ホワイトリカーの中には、梅の中から溶け出した成分が無いので、外に少しずつ引っ張り出されるとは思いますが、アルコールや水分が梅の実の中に引っ張られて行くほどのインパクトではないと思うので、外に出てくる芳香成分やエキスは若干量ではないかと思います。

という事で、アルコール(ホワイトリカー)だけでも、作れない事は無いとは思いますが、おいしいと感じるぐらいになるまでには、相当な時間が必要かもしれないですね。(普通に作った方が美味しいと思うので、アルコールのみの梅酒作りは試した事はありません ^-^;)


コメントは受け付けていません。